「展覧会 タローマン」の感想。虚構が現実になる瞬間に立ち会う。

こんにちは、栃木三和です。

今回は、東京のNHK放送博物館で開催中の「展覧会 タローマン」に行ってきましたので、感想を書きます。

そこには、全力でエイプリルフールをやっているかのような独特な空間が広がっていました。

開催は2022年12月4日までとのこと。かなりギリギリですが、非常に面白かったので、気になっている方はぜひ行ってみてほしいです。

「展覧会 タローマン」とは

「展覧会 タローマン」とは、東京都港区にあるNHK放送博物館にて絶賛開催中のタローマン関連イベントです。

大人気テレビ番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」で使われたプロップ(小道具)や衣装、関連グッズなどが展示されています。

先行して大阪中之島美術館にて「タローマンまつり」という名で行われて好評を博し、晴れてその東京版が開催されたんですね。

べらぼうな巨人「タローマン」とは

「タローマン」とは、岡本太郎の作品をモチーフとした特撮番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」に登場するヒーロー…ヒーローなのかな…?巨人です。

NHK教育テレビで2022年7月に放映されてからというもの、

・一度見たら忘れられない強烈なキャラクター
・一見正統な特撮ヒーローのガワをかぶっておきながらデタラメすぎる世界観
・この令和にして異様なほど追求された昭和時代のテレビ番組の空気感
・ウルトラマンを始めとした特撮作品のパロディー登場
・衝撃のラスト

などなどなど、あらゆるネタにことかかず、まさに爆発的なヒット作品となりました。

なお、タローマンが制作されたのは1972年というテイです。

さて、Eテレでの放送から半年ほど経った今もその人気は衰えず、何度も再放送を繰り返しています。

直近では、10月にNHK大阪の音楽番組『第22回わが心の大阪メロディー』にもタローマン本人がゲストで登場して話題になりました。

タローマン本編の感想については以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひこちらも併せてどうぞ。

「展覧会 タローマン」の展示内容

3階企画展示室

展示室にいくと、いきなり「なんだこれは!」と言いたくなるような券売所のタローマンが出迎えてくれました。

入場口のこちらの絵、どうやら岡本太郎の作品「露店」のパロディーのようです。

元となった絵は、上野の東京都美術館で行われている「展覧会 岡本太郎」で見ることができます。

さっそく展示室内に入ると、さまざまなタローマンの展示品が並べられていました。

1970〜1972年頃に作成されたというタローマンの企画書。古びた色合いが時代を思い起こさせます。

実際に使われた衣装や奇獣たちの着ぐるみ。

みんな大好きタローマンのコスチューム。

撮影に使われたという小道具やミニチュアたち。

タローマンパン、ちょっと食べてみたいので何かが狂って販売されないかなーとヒッソリ思っています。

タローマン以前に放映されており、わずか5話で打ち切られたという伝説のヒーロー「大権威ガ・ダーン」。ようやく会えました。

誰だおまえは。

タローマンマニアであるサカナクション・山口一郎氏所有のコレクションについての案内パネル。「遊び心」という言葉に止まらない真剣さを感じます。

タローマンカード。こういうのって集めたくなりますよね。所有者はもちろん山口一郎氏です。

タローマン消しゴムやカルタなどなど。なお、カルタは現代ですと超復刻版が手に入ります。

タローマンのお面やフィギュアたち。ガ・ダーンや奇獣バージョンもあるとは。
そういえば、12/26発売の「てれびくん」にタローマンのお面が付録でつくそうです。想像以上にタローマンが普及していることがうかがえます。

タローマンのフィギュア、ずんぐりした感じがいかにも「当時のおもちゃ」っぽいです。

幼少期の山口一郎氏がタローマンのヒーローショーに行ったときの実物写真(?)も見ることができました。

奇獣「未来を見た」と昔の日本のお茶の間ジオラマ。

昔なつかしいブラウン管のテレビでは、いまや伝説のタローマン第1話「でたらめをやってごらん」、「大権威ガ・ダーン」の最終回、ファミコン版タローマンの映像が流れていました。

来場者たちがテレビの前にぞろぞろと集まり、みんなでブラウン管テレビを囲んでタローマンの映像に見入りました。

古いテレビらしく、映像は現代の4Kテレビのように鮮明ではありません。

かつて、日本でまだテレビが珍しかった頃、テレビがある家に近所の人々などが集まって、みんなで一緒に1つの番組を見たといいます。

映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)でも、町の人々が頭を突き合わせるようにしてテレビ画面にかぶりつき、みんなで力道山のプロレス試合を見ているシーンがあります。

今は芸能界を引退されている堀北真希さんが、満面の笑みで力道山の空手チョップを真似していたことをよく覚えています。

来場者たちがみんなでブラウン管テレビを囲む光景は、それこそ1970年代に当たり前にあった風景の再現だったといえるでしょう。

ちなみに、初代ウルトラマンのチョップは、力道山の空手チョップを参考にしたそうですね。

でしょうね。

部屋はそう広くはありませんが、ぎっしりとタローマン関連の展示が充実し、見応え十分。

出口付近には岡本太郎の紹介展示があり、太郎が出演したNHKのテレビ番組も見ることができました。

1階の出入り口付近

1階にはフォトスポットのほか、ビルの窓を突っつけるコーナーがありました。

子どもたちも大人も満面の笑みでビルの窓を潰していたのが印象深いです。もちろん私もやりました。

「タローマン大ずかん」や「メンコ」の配布が行われていたので、私もありがたく頂戴しました。

もらったメンコの絵柄は、悲劇のヒーローことタローマン2号でした。

タローマン2号、きみのおかげでウルトラマンのゾフィーとゾーフィがまともに見られなくなったぞこっちは。

タローマンのポストカードももらいました。「随時放送中」という文言は初めて見ました。随時とは。

人々の反応によって完成していく「タローマン」というアート

「展覧会 タローマン」で面白いと思ったことの1つに、「来場者の反応」があります。

会場で、展示グッズを指差して「これ持ってた!」「なつかしい!」と喋っているお客さんを見かけました。

タローマンのユニークな面白さとして、「存在していないものを、あたかも存在していたかのように皆が扱っている」という点があります。

筆頭はサカナクションの山口一郎氏ですが、Twitterでも検索してみると、自分が子どもの頃に見たタローマンの記憶を語ったり、かつて持っていたグッズの思い出をなつかしがったり、「タローマンは1970年代の作品だ」と主張したりしている人々を見ることができます。

タローマンにおける「リアルな虚構」とでもいうべき独特の質感で固められた世界観は、作品自体が創り出されるだけでは足りなくて、「それを観て反応する人々」によって強化されると思います。

もし、この展示室に自分たった1人しかいなくて、静かに展示品を眺めていたとしたら…もちろんそれはそれで面白かったでしょうが、はたして「消しゴムなつかしい」と言っている人の横で鑑賞していたときほど愉快な気持ちになっただろうか?と思うことがあります。

「展覧会 タローマン」は、展示品を並べるだけではなく、それらを鑑賞する人々の存在によって真に完成されるエンターテインメントといえるのではないでしょうか。

NHKでドラマ化もした漫画『作りたい女と食べたい女』の第1話に、主人公が「アートが観てくれる観客がいないと成立しないのと同じように、料理も「食べる」までがないと成立しないんだな」というセリフが登場します。私の好きな言葉です。

絵画や彫刻、音楽や演劇といった芸術作品は、それを観る人がいなければ、ただの物体・事象であるとか。
アートは何らかの「メッセージ」であり、メッセージである以上は、受け取り人が必要だとか。
そもそも芸術品は商品という側面もあるから、金銭やらなんやらのやり取りする顧客がいるとか。
エンターテインメント目的なら、当然楽しませるべき相手がいて、その相手も一種の”お作法”にしたがって楽しむという双方向性があるとか。

「展覧会 タローマン」は、この「アートは観客がいないと成り立たない」について考えてみる、いい機会になりました。

タローマンはウルトラマンになりうるか

会場では、「あーっ!タローマンだ!」と大喜びでマネキンに駆け寄る子どもたちを見かけました。3歳くらいだったでしょうか。

他にも、タローマンの主題歌「爆発だッ!タローマン」を口ずさむ子や、奇獣の名前を次から次へと読み上げる子もいました。

この子たちの年齢からすると、アンパンマンは見ているけれども、まだ仮面ライダーには早いかな…?というくらいです。

ひょっとしたら、この子たちにとって「タローマン」が生まれて初めて触れる特撮ヒーロー作品かもしれないわけです。

サカナクションの山口一郎氏が子どもの頃に見たタローマンの思い出は幻覚ですが、会場にいた子どもたちにとっては現実です。

彼・彼女たちは20代や30代になったとき、「タローマンですか?ああ、見てましたよ」と本物の思い出を口にできるのです。

それはまるで、今の大人たちが、「子どもの頃に見たウルトラマンが好きでしたね」とか「ごっご遊びではゾフィー役をやっていましたよ」とか「ウルトラマンティガ世代でした」などと語るのと同じように。

大人たちは「そういうテイだ」と分かりつつ、”フリ”をして面白がっていますが、子どもたちは実際に放映を見ています。再放送だって見ているかもしれません。

タローマンはウルトラマンになりうると同時に、ある意味では、ウルトラマン以上に「虚構が現実になる」わけです。

なんだかとてもうらやましい体験をしているなと思います。

NHK放送博物館へのアクセス、会場案内

ちょっとした山の上にある博物館

NHK放送博物館は、東京都港区にある「愛宕山(あたごやま)」というちょっとした山の上にあります。

山と聞くと身構える人もいるかもしれませんが、標高自体は25.7mと高くはありません。

私は東京メトロ日比谷線「神谷町駅」の3番出口から歩いていきました。

地図を見ながら歩くと、地方の山の中にあるようなトンネルが見えてきます。

NHK放送博物館は、このトンネルの上にあります。

階段のついた道がありますが、入口の看板が小さめで見落としやすいので、注意が必要です。

博物館への道は、いかにもな「山道についている階段」です。

そこそこ傾斜がありますので、ハイヒールよりも、スニーカーなどの歩きやすい靴で行くことをおすすめします。

なお、私は気づきませんでしたが、トンネル東側には「愛宕山エレベーター」があり、階段を登るのが大変な人はそちらが使えるようです。

企画展示室は3階。フォトブースは1階

NHK放送博物館は無料で入れます。

館内エレベーターや階段を使って、建物の3階へ昇りましょう。

「展覧会 タローマン」が行われている「3F 企画展示室」は、建物の角にあります。

なお、私はエレベーターを降りたあとにストレートに企画展示室へ辿りつけず、ぐるっと常設の「ヒストリーゾーン」をひと回りしました。

前述したように、1階には、タローマン関連のパネルやビルの窓を突っつけるスポット、写真撮影スポットがあります。

最初にこちらに向かってもいいですが、ちょうど博物館内の順路通りに見ていくと最終的にこの1階の場所にたどり着くため、最後でもいいと思います。

とはいえ、「タローマン大ずかん」や「メンコ」は1階で配布されていたので、先にもらうというのも手かもしれません。

おわりに

「展覧会 タローマン」、まるで空間全体がカラフルなエイプリルフールのようでした。

全力で作り上げられたでたらめな虚構の世界を楽しみ、自分もまるで本当にその世界を知っていたかのように振る舞い、ワッハッハと笑い合う。とても楽しかったです

「真剣に、命がけで遊べ」と岡本太郎も言っています。

命がけとまではいかないまでも、「全力で遊ぶ」とはどういうことか?という問いへの1つの解がここにあったと思います。

「展覧会 タローマン」は2022年12月4日まで。入場は無料ですし、展示室も一部屋で広くないので、気軽に鑑賞できます。もし行けるようであれば、ぜひ行ってみてください。
Enjoy!

(この記事は、2022年11月の情報で記載しています。最新情報は公式にお問い合わせください。)

スポット情報

NHK放送博物館

住所:〒111-0042 東京都台東区寿4丁目14-7 中塚ビル
電話番号:03-3841-0245
営業時間:午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
定休日:毎週月曜日休館(祝日除く)、年末年始
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/museum/index.html
最寄駅:東京メトロ日比谷線 神谷町駅、銀座線 虎ノ門駅、都営三田線 御成門駅など