こんにちは。栃木三和です。
今回は、平成仮面ライダーのスーツアクターとして知られる高岩成二さんのアクションワークショップに参加しましたので、レポートと感想をお届けします。
こちらスポーツ経験なし、武道経験なし。アクション経験、もちろんなし。
そんな人間が、アクション体験に挑戦してどうだったか?
高岩成二さんのアクション教室はどんな感じなのか?
興味がある方の参考になれば幸いです。
高岩成二先生のアクションワークショップとは
ワークショップの概要
高岩成二さんは、俳優として、そしてスーツアクターとしてご活躍されています。
スーツアクターとは、着ぐるみを着て演技をおこなう役者のこと。
高岩さんは、スーパー戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズなどの東映作品でスーツアクターを担当され、特に平成時代の数々の仮面ライダーを演じてこられたことから「ミスター平成ライダー」の異名をお持ちです。
私が参加したのは、高岩成二さん×パフォーマンスチームTEAM☆T.A.W(代表:高岩利恵さん)主催のアクションワークショップであり、高岩成二さんを講師として、ほぼ毎週開催されているものです。
去る9月、私は埼玉県の朝霞武術体育館でおこなわれたワークショップに初めて参加しました。
なお、朝霞武術体育館は自治体の施設ではなく、中国武術を愛するオーナー様による個人施設であり、太極拳やダンスなどの教室も開かれています。
アクション経験なし、スポーツ経験なしで参加した筆者
アクションの経験はありますか?
ないです
武道の経験は?
な、ないです…
筆者のスポーツ経験といえるのは、高校時代に入っていた登山部のみ。
車も自転車も持っていないので移動手段としてよく歩きますが、その程度です。
筋トレも続かないですし、スポーツジムはすでに2回やめています。
この日、高岩先生のワークショップに初めて参加したのは私だけで、他の方々は明らかに武術や舞台など、何かしらの経験者のようでした。
壁際で靴紐を結びながら、「場違いなところに来てしまった…!?」と内心震え上がりました。
アクションワークショップの内容と感想
今回のワークショップの流れは、以下のとおりでした。
- 準備体操
- 素手アクション(パンチ、キック)
- 武器アクション(木刀の素振り)
- 二人一組で素手アクション練習
- 二人一組で武器アクション練習
- 素手アクションの殺陣
- 扇アクションの殺陣
それぞれについて詳しく記載します。
①準備体操
まずは、みんなで並んでウォーミングアップをおこないます。
私は内心ビビってはいたものの、高岩先生や動きがうまい方の動き、そして全身鏡に写る自分の姿をよく見たかったので、前のほうに並びました。
準備体操は、かつて学校の体育の授業でやったものとほぼ同じでしたが、唯一「右腕と左腕を前後逆に回す」という動きがどうしてもできませんでした…。
日常ではまずやることのない動作なので、脳に動きの回路ができていないのだと思います。
②素手アクション(パンチ、キック)
基本的な素手アクションを練習します。
パンチは正拳突きのほか、相手の頬の位置を目がけて拳を振る殴り技など。
現実のケンカとは違った、「アクションとして”魅せる”パンチ」を学びました。
実際に相手に殴りかかる場合とは異なり、アクションでは拳を勢いよく振り抜くことで、見栄えが良くなるそうです。
キックは、「前蹴り」「後ろ蹴り」「回し蹴り」など。
蹴り出したときの足首の角度がポイントとのことでした。
なお、私は勢いよく蹴り出したときに、足の筋にピキッとイヤな痛みが走ったので、慣れないキックでは変に勢いをつけすぎないことをおすすめします…。
③武器アクション(木刀)
木刀を使った武器アクション練習です。
自前の木刀を持っている方はそれを使いますが、私は持ってないので、貸出用の木刀をお借りしました。
初心者向けとして、軽めの1本を選んでいただきました。
練習したのは、「真向斬り」「袈裟斬り」「逆袈裟斬り」「胴斬り」など。
私は「胴斬り」がうまくできず、高岩利恵さんに目の前に立っていただきながら、木刀を真横一文字に動かす練習をしました。
④二人一組で素手アクション練習
二人一組のペアになって、素手アクションと武器アクションを練習します。
高岩先生にペアを決めていただいたので、ぼっちになることはありませんでした。
攻撃側と受け手側に分かれて練習をおこないます。
本当にパンチを食らわないよう、しっかり相手と距離をとります。
殴られる側のポイントは、拳が目の前を通り過ぎるのをきちんと確認してから、打たれたふりをすること。
でないと、拳が当たっていないのによろめくことになるので、演技としてダメだそうです。
殴る側は、「今からパンチをします」という合図として、「ハッ!」とか「ヤァッ!」と声を出すそうです。
殴る瞬間に声をあげるのではなく、拳を突き出す前に声を出すのがポイントだそう。
私は「ハッ!」とか「ヤァッ!」といったかけ声は、気合いを入れるために出しているか、もしくは演者の声が思わず漏れているかのどちらかだと思っていたのですが、「受け手に攻撃のタイミングを教える」という合図だったのですね。
⑤二人一組で武器アクション練習
同じペアで、今度は木刀を使って斬り合います。
こちらも、相手に木刀が当たらないよう、十分に距離をとります。
剣を振り上げて上側で剣先を合わせることを「天」、剣を振り下ろして下側で合わせることを「地」と呼ぶそうです。
まずは、単純に「天」と「地」を順番に繰り返します。
次はややレベルアップして、「天」と「地」の順番が複雑になるほか、胴斬りが入ります。
私は「天」「地」の繰り返しは普通にできましたが、動きが変則的になった瞬間、とたんに頭が混乱しました…。
次にどういう動きで木刀を振るうのかがわからなくなるのです。
「ゆっくりでいいですよ」という先生の言葉のもと、なんとかこなすことができました。
ペアを組んでくださった方には感謝でいっぱいです。
⑥素手アクションの殺陣
じゃあ皆さん、殺陣(タテ)をやります
(エッッッッッ!?!?!?)
「殺陣(タテ)」とは、喧嘩や試合、殺人などのシーンでおこなわれる「闘争演技」のことです。
殺陣にはパンチやキックのほか、刀や棒、銃といった武器を使う演技も含まれます。
もとは歌舞伎の言葉だそうですが、今は現代劇などにも使われる演劇用語となっています。
殺陣練習は、4〜5人で1チームになっておこないます。
1人がその殺陣の主役となり、3人が敵として襲いかかってくるので、順番に倒していく、という流れです。
主役の演者を「芯(シン)」、敵役を「絡み(カラミ)」と呼ぶそうです。
私は、今回はシンをやらせていただくことになりました。
「初参加の人に、敵を倒す爽快感とヒーローの気分を味わってもらう」というご厚意だったと思います。
ただ正直、ここで自分が殺陣をやることになるとは思っていなかったため、ものすごく焦りました…。
しかも、練習後は「本番」として参加者全員の前でチームごとに殺陣をおこない、その様子を高岩先生がスマホで動画撮影するとのことです!
「えっ!?私、今日アクション自体が初めてなんですけど!?私も殺陣やるんですか!?」と動揺しまくりましたが、さすがにそんなことを言える状況ではありません。
高岩先生がチームの割り振りを決めたとき、私も腹を決めました。
即興で作られる殺陣
びっくりしたのは、殺陣の流れは、高岩先生がその場で作ったということです。
てっきり、本番はともかく練習の殺陣には決まった定型があるものだと思っていたので驚きました。
「まずこうして、次にこうやって、いや、やっぱりこうして、相手がこう来て…」と即興でアクションの流れが生まれていくさまを、私はポカンと眺めていました。
アクションをやられている方には当たり前の光景なのかもしれませんが、素人にはただただ驚きです。
世の中には「アクション監督」「殺陣師」「ファイト・コーディネーター」といったアクション設計や指導の仕事がありますが、その一端を見た気がしました。
いざ、アクション!
チームには、私のほかにもう一人シン役の男性がいたので、「お手本」としてその方に何度もカラミ役との殺陣をやっていただき、動きや流れをひたすら観察しました。
次に、男性の横で自分も一緒に動いて真似しながら、シャドーボクシングのような形で練習。
その後、自分もカラミの方々を相手に、実際の組み打ちをおこないました。
はじめはゆっくり全体を通し、慣れてきたら徐々にスピードを上げていきます。
カラミ役の方々が、かなり根気強く相手をしてくださるのが大変ありがたかったです。
いざ本番の殺陣は、15秒ほど。
なんとか動作を間違えずにやり通せたので安心しました。
高岩先生からも「うん、いいですね!」とお褒めの言葉をいただけたのが嬉しかったです。
高岩先生に撮影していただいた自分の殺陣の動画を見てみると、意外とちゃんとアクションに見えることに驚きました。
音楽や効果音を入れたら、本当にそれっぽくなるだろうなと思います。
やはり、これはカラミ役の方々のおかげです。
カラミの方々が勢いよく吹っ飛んだり倒れたりする演技をしてくださったことで、私のヘナチョコパンチがまるでボクシング王者マイク・タイソンのパンチのように見えるわけです。
実際、殺陣ではカラミの演技が重要だそう。
カラミが見事なやられ演技をこなすことによって、シンの強さやカッコよさを相対的に表現するわけですね。
⑦扇アクションの殺陣
扇は、主に中国武術において暗殺に使われる武器だそうです。
初めて触った武術扇は、私が夏に使っている扇子とは異なり、サイズが大きくて重さもあります。
イメージとしては、まさに『鬼滅の刃』に登場する鬼、上弦の弐こと「童磨(どうま)」の武器そのものです。
※童磨(どうま)=『鬼滅の刃』に登場人物。驚異的な強さを持つ鬼であり、胡蝶しのぶの宿敵。金色の扇が武器。CVは宮野真守。
こちらも、私はシンをやらせていただきました。
扇の左右を引っ張っても開かないので「???」とこねくり回していると、見かねたチームの方(※体育館のオーナーさん)に開き方を教えてくださいました。
手首にスナップをきかせて勢いよく振り下ろすと、「ジャッ!」と大きな音を立てて、扇が開くのです!
なんかもうそれだけでカッコイイですし、見た目も華やかで、厨二心をくすぐる武器です。
蝶のように舞い、蜂のように刺す扇アクション
武術扇は、高岩利恵さんに主に動きを教えていただきました。
扇アクションは、動きがまるで舞踏のように美しく、しなやかで華やかです。
力強く拳や巨大な剣を振るうアクションとは違って、まさに「蝶のように舞い、蜂のように刺す」アクションです。
私もやってみましたが、はっきり言って、素手アクションよりずっと難しいです。
敵のパンチやキックをいなしながら、自分も足技を繰り出すだけでなく、タイミングに合わせて扇を開閉し、それで相手を打ったり払ったりしなければなりません。
こちらも高岩先生に動画を撮っていただきましたが、素手アクションよりはうまくできませんでしたね。
「鬼滅の刃の童磨って本当にすごかったんだなぁ」と思いがけないところで童磨の解像度が上がりました。
ワークショップ全体をふりかえって
こちらでは、ワークショップをふりかえっての所感を書きます。
やわらかい空気感のなかでおこなわれたワークショップ
高岩先生の指導は、とても優しかったです。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」と安心させてくれますし、見よう見まねでパンチやキックをやってみると「いいですね」と褒めてくださいます。
あまりうまくできなくてもフォローしてくださり、モチベーションを維持できました。
これが舞台やテレビ出演に備えた練習であれば指導のやり方も違うと思いますが、ワークショップはあくまで初心者も参加OKな教室なので、やわらかい空気感でした。
他の参加者の方々も、慣れない動きに悪戦苦闘する私に気をつかって接してくださいました。
「こんな動けない人間の相手をさせて申し訳ない」と私は恐縮しきりでしたが、「なんとかできるようにならなくちゃ!」と集中力や気合いの入れ直しにプラスに働いたと思います。
“やられ役”あってこその”主役”
アクション体験で攻撃側の立場をやってみて、いかにやられ役が大事かということを感じました。
私はNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(2021年)が大好きでして、そこには本郷奏多さんが演じる「五十嵐文四郎」というキャラクターが登場します。
五十嵐は新人の大部屋俳優で、劇中でよく時代劇の斬られ役や死体役を演じるのですが、彼はそういったやられ役をものすごく真剣に練習するんです。
そんな五十嵐の様子を見て、やられ役の担う役割をなんとなく知ったつもりでいましたが、いざ自分でアクションしてみて「そういうことか」と実感を持ちました。
主役は、単体では「本人の強さ」がわかりません。尺度がないからです。
ですが、やられ役が派手に倒されていくと、ようやくそこで「この主役キャラクターは強いらしい」ということが観客に伝わります。
「強さ」とは、絶対的ではなく相対的な概念なんだなと思いました。
アクションとはフィクションである
アクション体験をして実感したのが、「アクションはフィクションである」ということです。
アクションは、どうすれば主役が華々しくカッコよく見えるか、流れるように動けるか、しっかり考えて作られています。
殺陣も、「こうやって右手でパンチをすると、この方向から次の敵がやってくるので、そうしたらこのように動く」といったことが、無理なく流れに乗って動けるように組み立てられていることがわかりました。
また、当然ながら、演者の安全も考慮されています。
実際の喧嘩や戦闘になったら、絶対にアクションのようにはなりません。
もっと力任せで滅茶苦茶のグチャグチャになり、そこには見栄えやカッコよさなんて存在しないでしょう。
安全に、でもハラハラドキドキさせて、鮮やかなカッコよさで観客を楽しませること。
アクションとはそういうものなんだなと感じました。
上達には「観察」と「真似」と「反復」
アクションに限りませんが、何事もうまくやりたいと思ったら「お手本をよく観察して真似る+ひたすら反復する」が1番近道だなと思いました。
パンチもおぼつかない中で「殺陣をやる」と言われたときは竦み上がりましたが、なんとか殺陣の流れを覚えられたのも、「観察」と「真似」と「反復」のおかげでした。
一種の成功体験だったので、この3点は他のことにも応用していきたいです。英語とか絵とか会計の勉強とか。
とはいえ、なかなか「強制力」がないとサボってしまうのですが…精進します。
余談:ウルトラマンゼロとRANGEの話
この項は、完全に私個人の話です。
私がアクション体験をやってみようと思った理由は、一言でいえば「ウルトラマンゼロになりたかったから」です。
もともと仮面ライダーやスーパー戦隊は10年ほど見ていましたから、アクションには「すごいなぁ、カッコイイなぁ」くらいのぼんやりとした興味はありました。
ですが、いよいよアクション教室の門を叩くきっかけになったのは、間違いなく「ウルトラヒーローズEXPO 2022 サマーフェスティバル」でウルトラマンゼロに会い、いっしょに写真を撮ったことです。
ウルトラマンゼロとは、ウルトラセブンの息子です。
声優は童磨と同じく宮野真守さんが声を当てており、NHKの「全ウルトラマン大投票」で第4位にランクインするなど、ウルトラシリーズの中で絶大な人気を誇ります。
※「全ウルトラマン大投票」の感想はこちら。
ウルサマ2022で初めて見た「ウルトラマンゼロ」というキャラクターは、そりゃあもうカッコよく、「私もあんな風にカッコよくポーズできたらいいな」と憧れを覚えました。
同時に、「ウルトラマンゼロを演じられたら、さぞかし気持ちがいいだろうな」とも思いました。ええ、はい、中の人などいませんが…はい。
Twitterで公開したこのウルトラショットは皆さんに面白がっていただけたようですが、
ですが、個人的に好きなのは、こちらの写真です。
このとき、自分は「とにかくカッコよくポーズを決めよう」と思い、むしろ「私がウルトラマンよ!!」と胸を張るくらいでいこうと思いました。
とても清々しく、爽快な気持ちだったのを覚えています。
このウルトラマンゼロとの写真撮影がきっかけで、「私ももっとカッコよくポーズを取ったりアクションしたりしてみたいな」と思いはじめ、アクション教室に申し込みメールを送ったのでした。
それだけ自分はこの2022年夏の体験が強烈だったのでしょう。
まさに「原体験」です。
人生、何がきっかけになるかわかりません。
私が好きな本『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』(日経BP 2020年)にも、「早期の専門特化にこだわらず、いろいろやってみることの大切さ」が書かれています。
今回の場合は「ウルトラマンゼロとのツーショット」が私の背中を押しましたが、何が行動の起爆剤になるのかは本当にわからないので、この先も年齢や過去の経験などでセルフ・ハンディキャッピングを課すことなく、いろいろやってみようと思っています。
初心者も参加OK!アクションは面白いぞ!
今回は、高岩成二さんのアクションワークショップに初参加したときの話をお伝えしました。
運動経験も武術経験もなく、動機は好奇心のみ。
我ながらよく参加したなと思いますが、楽しくアクション体験ができたので良かったです。
同時に、自分の体の動かなさも痛感しましたので、筋肉や柔軟性を鍛えていこうという新たなモチベーションが生まれました。
このアクション体験レポートは朝霞武術体育館編ですが、後日、埼玉県川越市の施設「スタートランド」で開催されたワークショップにも参加しましたので、そちらの感想もまた書きたいと思います。
ワークショップは参加者でもついていける内容でしたので、「アクションをやってみたい」という動機はもちろんのこと、「運動不足なので体を動かしたい」「アクション俳優から直接指導を受けたい」でもいいと思います。公式告知にもそう書いてあります。
興味があれば、まずは申し込んでみてはいかがでしょうか。Enjoy!
(この記事は、2022年9月12日の情報で記載しています。最新情報は各公式様へお問い合わせください。)
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